日記的なサムシング

長文置き場

2022年のポケットモンスターの音楽演出を語りたい

 ポケモーニング!(死語)2022年はゲームフリークが開発したシリーズ本編が2作も発売される恐ろしい年になりました。即ちレジェアルとスカバイです。これら2作の音楽演出があまりにも素晴らしく、定期的に思い出してはウワーーーーッッッとなるので紹介記事を書くことにしました。なお、以下では2作のネタバレを大いに含むこととなるのでまだクリアされていない方、終盤のネタバレを見たくない方はブラウザバックをおすすめします。個人的にはダイパプラチナやっててレジェアルをこれからプレイする予定の方もブラウザバックを強くおすすめします。この記事はダイパやったけどレジェアルって面白いの?とか、最新作ってオープンワールドらしいしなんかのほほんとしてるしピリッとした曲とかあんまりないのかも…とか、買うか買わないか迷ってるくらいの人を音楽演出めちゃくちゃ良いから迷ってるなら浴びてきな、と背中押すのが目的です。あと既プレイの人とここめっちゃ良かったよねってのを共有したい。
※以下の文章は筆者の解釈による部分を大いに含みます。これが正解!ということはなく、そう主張したいわけではないことをご理解ください。

ポケモンレジェンズアルセウス

 位置づけとしてはダイパリメイクにあたるものの、やや特殊な作品として2022年1月にリリースされた本作。今より少し昔の世界で、既存キャラの先祖かと思われるビジュアルのキャラクターが紹介動画に多数登場しており話題を呼んだ。そのうちの一人がウォロである。
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 発売前のPVや御三家を選んで初めてのバトルでトゲピーを繰り出す彼の姿を見て何人もの人が思ったであろう、どう見てもシロナやん。そんな彼が本格的に物語に絡んでくるのは終盤に差し掛かる頃だ。ギンガ団を追放され文字通り村八分にされた主人公を、彼はある女性のもとへ連れてくる。コギトさんである。
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 コギトさんを見たプレイヤーのこれまた何人もが思ったであろう、こっちがシロナやん。ウォロはミスリードだったのか…そんなウォロやコギトさんとの関係はクリア後に更に掘り下げられることになる。エンディング後にゲームを再開すると、タイトルに掲げられているにも関わらず終ぞエンディングまで触れられることのなかったポケモンの名前がウォロの口から語られる。アルセウスである。彼の導きのままにプレートを集め残り一枚となったとき、彼は己の素性と真の目的を明かす。彼が古代シンオウの民であること、アルセウスに会い、従えるためにプレートを集めさせたこと。推しのコスプレ古代シンオウの装束(?)を身に纏った彼にプレートを掛けた最後の勝負を挑まれるこの瞬間、イントロが流れる。 やっぱりお前がシロナやんけ!!!!!!!!彼らにシロナの面影を見たプレイヤーであれば誰しもが脳内再生余裕のあまりに有名なイントロがここまで引っ張られて最高の形でアレンジBGMとしてお披露目されるのである。 しかもこの一連の音楽演出、まだまだ止まらない。ウォロの手持ちのポケモン6体を撃破しても戦いは終わらず、やぶれたせかいから姿を表したギラティナが彼に力を貸し、襲いかかってくる。有名なギラティナ 打破せよ!」のシーンはムービー、構図、シチュエーションなども相まって手に汗握るとても印象的な図となっている。めちゃくちゃかっこいいよね。
 そして始まるギラティナ戦。こちらのポケモンは前の戦いの傷が癒えていないためピリッと張り詰めた状況の中、緊張感のある静かなダイパ汎用伝ポケ曲が染みる。全体的にこのへんの演出ダイパ音源使ってる気がする。察しの良い方ならこの時点でアナザーフォルムのギラティナを見て連戦を察したであろう。やっとの思いで撃破したかと思いきや倒れないギラティナ、赤く光る眼、フォルムチェンジ、唸るギター、知ってるフレーズ。あろうことかダイパ時代のギラティナの持ち曲(汎用伝説曲)からプラチナのギラティナbgmに繋がる。そんなことして良いんですか!?!?*1こんなのもうbgmオタク卒倒ものである。絶望的な手持ちのHPも相まって止まらん滝汗と涙、止まらんポッポ肌。そもそもオリジンフォルムのbgmアレンジを単品で見ても原曲の印象的な部品がおそらく同じ音色でいくつも散りばめられており、新しいのにかつてギラティナと対峙した際の威厳を思い起こさせる秀逸なアレンジとなっている。レジェアル自体がかつてダイパ・プラチナをプレイした人をメインターゲットにしているだけあって原曲を知る人へ向けた演出が最高のシーン。初めて体験したときの感動は忘れられない。ここまで読んでもし未プレイの方がいらっしゃれば、是非ご自分のプレイ体験として浴びてほしい。

スカーレット・バイオレット

 SVでは過去作と違ってフィールド曲・ライド曲・野生戦闘曲がシチュエーションに応じてシームレスに遷移し、またトレーナー戦についても視線が合った状態(話しかけて!が出た状態)からトレーナー戦闘曲へ曲中の区切りのいいタイミングで移行するシステムが採用されている。つまり何が言いたいかというと、ポケモンらしさの一つとも言える過去作のような特徴的なピロピロイントロが存在しないのだ。今作はオープンワールドであることをキャッチコピーにも掲げており、没入感を損なわないためにこのような作りになったのかと思われる。筆者はインタラクティブミュージック(長くなるのでここでは説明を省きますがググると詳しい記事がたくさん出てきます)が好きなのでシームレスBGM遷移のポケモンというのも新鮮で楽しかったが、やはり新しいポケモンと出会ったときにイントロがないことには一抹の寂しさを覚えた。勿論ジムリーダー戦やライバル戦、スター団との戦闘ではその限りではないので一切イントロ付きの曲が存在しないというわけではない。*2
 さて、3つのルートを終えて物語も終盤に差し掛かる頃、主人公と友達3人、そしてミライドン又はコライドンの一行は博士の導きの元にパルデアの大穴の奥底に降りることとなる。幻想的な自然風景の広がるここでは地上では見かけなかったようなポケモン達の姿も見ることができる。まだ捕まえてないポケモンを見つけたらどうするか?捕まえるために勝負を挑みに駆け寄るトレーナーも多いのではないでしょうか。かくいう私も足早に突っ込んだ先で衝撃のあまり目を白黒させることになる。なんとエリアゼロでの野生戦にはしっかりとイントロが用意されてあるのである。これだよこれ!!!!!小気味よいイントロに続いて初めて聞くポケモンの鳴き声。ポケモンやってるなぁ〜〜〜!!!という気持ちにさせられてここでテンションが爆上がりになる。ちなみに筆者がここで出会ったのはリキキリン。存在こそ事前に紹介動画で知っていたもののまだ聞き馴染みのない特徴的な鳴き声が神秘的な空間に映える…
 さらに大穴の奥に進み、1つめの観測ユニットに到達すると、スカーレット・バイオレットのバージョン違いでそれぞれあるポケモンと初遭遇することになる。筆者が選んでいたのはバイオレット。見覚えのあるシルエットだがよく見ると少し違う…?というところからあろうことか首の部分でパカッと開いて頭が取れる衝撃のシーン。パラドックスポケモンであるテツノツツミとの初遭遇である。このあと戦闘に移るわけだがここでも勿論前述のエリアゼロでの戦闘曲が流れる。先程のリキキリンとは違って当然知ってるはずもない、しかしよく知ったポケモンを想起させる異形の存在とのファーストコンタクトに、イントロつきの戦闘BGMというのはピッタリだ。地上での冒険はある意味過去作をやっていて既存のポケモンをよく知っている人とそうでない人との感じ方に差があると言えるが、ことエリアゼロでの対パラドックスポケモンという体験に限って言えばほぼ間違いなく意図的に足並みを揃えられている。パラドックスポケモンの原型となるポケモンが(バージョン違いでないと捕まえられないものもいるとはいえ)パルデア地方に生息するポケモンが元ネタになっているのも、今作がシリーズ初めてであるプレイヤーに元ネタのポケモンを先に知っていてもらう目的もあるかと思う(勿論他にもたくさん理由があると思うけれど)。
 さらにエリアゼロの深部へと進み、友達3人と別れた主人公はゼロラボの奥に設置されてあるタイムマシンの部屋で、テラスタル結晶のエネルギーを原動力とする博士のコピーAIと勝負することになる。今まで会話していた、我々を大穴の奥底へ誘致した彼ないし彼女は本物の博士ではなかったのである。実はこのことが発覚して以降、オーリム/フトゥーのテーマ(レジェンドルートでスパイスを食べたあとコライドン/ミライドンが取り戻した能力の解説をしてくれているときにかかっている曲)は流れない。何故ならこの曲はオリジナルのオーリム/フトゥーの曲であり、そのコピーAIである今目の前にいる彼/彼女の曲ではないから。ではAIの曲とは何なのか?ゼロラボでの戦闘曲はエリアゼロのフィールド曲や野生戦闘曲でもよく聞こえた特徴的なフレーズをイントロに持ち、全体を通してもこれまでの冒険で聞くことのできたとある曲のフレーズをメインに用いている。それは何か?テラレイドバトルである。つまりAIの曲とはラスタル結晶そのものの曲なのだ。勿論この戦闘において、博士のテーマ曲の引用はおろか息子であるペパーのテーマ曲・戦闘曲などのフレーズも一切使用されない。また、テラレイドバトルというのは作中の登場人物やシナリオとは一切切り離された、複数のプレイヤーの世界が接続される場所である。そもそもポケモンシリーズはORASあたりからフーパのリングやウルトラホール、リメイクによるシナリオの分岐などによる並行世界の存在を明確に示唆しており、これを語る上では、初代からポケモンという作品の大きな特徴として受け継がれている2バージョン売りによる出現ポケモンなどの相違、通信交換によって異なる世界と交わることができるというシステムは切っても切り離せない関係となっている。少し話が逸れたが、つまりAIとの戦闘というこのシーンは地上でのジム巡りやスパイス集め、スター団との決戦などといったシナリオ上の宝探しの体験とは切り離され、"プレイヤー"という存在の持つ一つの世界とAIの持つ世界の交差なのである。これを裏付ける根拠の一つとして、タイムマシンを停止させる装置の構造が挙げられる。タイムマシンを停止させるには、スカーレットブック又はバイオレットブックをタイムマシンに挿し込む必要がある。このタイムマシンのビジュアルがゲームボーイにカセットを挿しこんだ様を彷彿とさせるものになっており、さらにこのスカーレットブック/バイオレットブックには幼い頃のオリジナルの博士によって名前が書かれている。これはかつて子供の頃ポケモンをプレイしていたプレイヤーの姿であると言え、この戦闘は単なるこの世界の登場人物との戦いというだけでなく、プレイヤーと同じレイヤーに立つ存在とのバトルであることを示唆していると感じた。*3

まとめとか

 かなり勢いのままに綴ってしまったので他人に伝わる文章となっているか不安なものの、少しでもこれらの音楽演出に「すげぇ!」と思ってもらえれば幸いです。どっちもめちゃくちゃ面白いのでやってない人はやってください!SVはDLCでたくさん曲が追加されるだろうのでそれも楽しみ。テラパゴス関係なんかはライトモチーフ共有あるかもですね。上記には書ききれなかったんですが、スター団したっぱ戦なんかも序盤は大人しめのところから終盤にかけてメロディアスなフレーズが展開されるのが好き。したっぱの手持ちはせいぜい1~2体であることがほとんどで、順当にあっさり倒してしまえばこの情緒的なメロディまで楽曲が辿り着くことはあまりない。噂ばかりが独り歩きして抱えたものの本質に気づいてもらえていない彼らによくマッチしていると思う。

*1:補足すると、ダイパ及びプラチナでは一部の伝説のポケモンと戦う際の汎用曲というものが存在しており、これはシンオウ地方にはパケ伝であるディアパル、三つ巴であるUMA以外の伝説のポケモンが多数存在するためかと思われる。ギラティナはダイパ時点でもどりのどうくつに出現する時はこの汎用伝説曲が使用され、パケ伝としてスポットの当てられたプラチナにおいては専用の持ち曲が新たに用意される。

*2:また、例外としてフィールド曲のみ用意されており遷移先のアレンジが用意されていないコサジタウン、フィールド曲の存在しないポケモンリーグ前やパルデアの大穴付近ではイントロつきの汎用野生戦が流れる。無からぬるっと遷移するわけにはいかないからね…

*3:なお、エリアゼロ関連の一連の楽曲を作曲したトビー・フォックス氏は自身の開発したゲームであるUNDERTALEにおいて、とあるルートのラスボスの曲に自身がすでに他の場所で公開していた既存曲のアレンジを使うという手法を取っている。これもゲームをプレイするプレイヤーと作中のキャラクターとのレイヤーを合わせることを目的とした、今作と似た仕掛けとなっているように思う。プレイしたことない方はあまり事前に調べないほうが良いタイトルなのでお気を付けください